企業に務めると、給与から引かれる「控除」の金額があります。健康保険料や年金と、税金です。保険や年金など,税金以外の部分を「社会保険」と呼びます。何故、給料から引かれるのか、何のための費用なのか、社会保険の仕組みを知っておきましょう。

社会保険は、「国」が定めている社会保障制度

健康保険や年金、労災保険などの保険制度は、日本の国が「社会保障」として整えている制度です。これは「国民の健やかで安心できる生活を保障すること」を目的として、公的責任で怪我や高齢になって働けなくなったときの生活を支えるための給付を行う仕組みです。
社会保険には、次の5つの保険制度があり、被保険者と事業主が負担した保険料を、事業主である企業が取りまとめて納付します。

◾️健康保険 通院・入院、長期休業時の生活保障、出産費用、産休中の生活保障
◾️年金保険 遺族の生活保障、障害状態の生活保障、老後の生活保障
◾️雇用保険 失業時の生活保障、スキルアップ
◾️労災保険 業務にかかわる病気やケガ、休業中の生活保障
◾️介護保険 介護予防、要介護時のケア

社会保険の仕組み

健康保険制度や年金保険制度は、保険料と国の負担で運営されています。保険料は、従業員の給与や賞与額に保険料率を掛けて計算し、事業主と被保険者である従業員で負担します。
これらの保険料や年金は、被保険者の状況に応じて給付されます。たとえば雇用保険では、失業時の生活保障に加えて、「職業訓練給付金」と呼ばれるスキルアップのための給付金制度もあります。働く人が主体的に能力開発をしたり、中長期的なキャリア形成を行ったりするための保障です。教育訓練受講に支払った費用の一部の負担や、基本手当が支給されない期間では受講に伴う諸経費についても支援があります。再就職の準備をサポートするための制度です。

会社員・公務員になると給与から差し引かれる

社会保険は、企業に就職したり、公務員になったりすると、給与から差し引かれます。自動的に引かれているように見えるので、「天引き」と呼ばれることもあります。
給与明細を見てみましょう。給与明細の「控除額」と書かれている欄で、税金以外の部分が「社会保険」の金額です。

給与と社会保険料

なお、労災保険は従業員のために会社が保険料を負担しているため、個人負担はありません。介護保険は40歳以降で加入するため、39歳までの人には保険料負担はありません。39歳以下の人なら、健康保険料・年金保険料・雇用保険料の3つが差し引かれます。差し引かれた費用は、社会全体の人々の生活を支えるために使われます。
高齢化社会が急速に進み、労働人口が減少している日本では、社会保障を支えていくための財源不足が問題となっています。そのため介護保険制度の見直しや、医療費が減らすために予防重視型へ転換するなどの取り組みも進められています。

社会保険の扱いはどうする?

先に説明したように健康保険や厚生年金、雇用保険は、従業員の給与や賞与額に保険料率を掛けて計算します。労災保険は企業が全額負担しますが、健康保険、年金保険、雇用保険、介護保険は企業と従業員の折半で負担します。
会社は従業員の給与から天引きした分と、会社が負担する分を併せて、社会保険や年金事務所、労働局などの関係機関に、決められた時期に納付します。
支払うまでに従業員から徴収したこれらのお金は、会社がいったん預かって、決められた時期に納付します。会計処理では「預かり金(健康保険料)」として計上します。

保険料の預かり金と納付